毎日のように飲んでいるコーヒー。その一杯の裏側には、世界各地のコーヒー生産国の努力と独自の栽培方法があります。本記事では、国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データに基づき、世界のコーヒー生産量を国別にランキング形式で詳しく解説していきます。
世界のコーヒー生産の現状
国際連合食糧農業機関のデータによると、2022年の世界全体のコーヒー総生産量は約1078万トンに達しました。これは前年の約992万トンから約7%の増加を示しており、コーヒー産業が着実に成長していることがわかります。
興味深いことに、上位1位と2位だけで世界の生産量のほぼ半分を占め、上位6か国で全体の約7割を生産しています。つまり、世界のコーヒー供給は少数の主要生産国に大きく依存しているのが現状です。
コーヒー生産量 国別ランキングTOP10
それでは、2023年のデータに基づく最新のコーヒー生産量ランキングを見ていきましょう。
第1位:ブラジル(約350万トン)
圧倒的な生産量を誇るのがブラジルです。世界で流通するコーヒー豆の約3割がブラジルで生産されており、飛び抜けて生産量1位を誇ります。
ブラジルコーヒーの歴史は古く、1727年にエチオピアからブラジルにコーヒー豆が伝わり、約100年後の1850年頃には世界最大のコーヒー豆生産国に変わっていました。現在も数多くのコーヒー生産農家が活動しており、非常に多種多様なコーヒー豆が生産されています。
味の特徴: ブラジル産コーヒーは、酸味と苦味のバランスが取れたクセのない味わいが特徴です。初心者から上級者まで幅広く愛される、まさにコーヒーの「定番」といえる存在です。マイルドで飲みやすく、ブレンドのベースとしても頻繁に使用されます。
主な栽培品種: ブラジルではアラビカ種とロブスタ種の両方が栽培されています。アラビカ種の生産量も世界トップクラスで、特にブルボン種やムンドノーボなどの品種が有名です。
第2位:ベトナム(約180万トン)
第2位はベトナムです。ベトナムはロブスタ種の生産において世界第1位を誇り、コーヒー産業において極めて重要な位置を占めています。
ベトナムのコーヒー栽培は比較的歴史が浅く、19世紀にフランス植民地時代に始まりました。しかし、1990年代以降の急速な発展により、現在では世界第2位の生産国となっています。
味の特徴: ベトナムコーヒーは力強い苦味と深いコクが特徴です。ベトナム式のコーヒーは練乳を入れて飲むスタイルが有名で、濃厚でパンチのある味わいが楽しめます。
主な栽培品種: 約95%がロブスタ種で、インスタントコーヒーや缶コーヒーの原料として世界中で使用されています。ロブスタ種はアラビカ種よりもカフェイン含有量が高く、病害虫に強いという特徴があります。
第3位:インドネシア(約80万トン)
第3位はインドネシアです。インドネシアは東南アジアにおける主要なコーヒー生産国で、独特の風味を持つコーヒーで知られています。
インドネシアのコーヒー栽培は17世紀のオランダ植民地時代に始まり、長い歴史を持っています。スマトラ島、ジャワ島、スラウェシ島など、各島で特色あるコーヒーが生産されています。
味の特徴: インドネシアコーヒーは、深いコクと独特のスパイシーな風味が特徴です。特にマンデリンは、その重厚な味わいとハーブのような香りで世界中のコーヒー愛好家から支持されています。
主な栽培品種: ロブスタ種が約8割を占めますが、アラビカ種も栽培されており、特にスマトラ島のマンデリンや、ジャワ島のジャワコーヒーが有名です。
第4位:コロンビア(約70万トン)
第4位はコロンビアです。コロンビアは高品質なアラビカ種の生産で知られ、「コロンビアマイルド」として世界的なブランドを確立しています。
コロンビアのコーヒー栽培は、アンデス山脈の標高1,200~1,800メートルの高地で行われており、この独特の地理的条件が高品質なコーヒーを生み出しています。
味の特徴: コロンビアコーヒーは、まろやかな酸味と甘い香り、バランスの取れた味わいが特徴です。フルーティーな風味を持ち、柔らかい口当たりが楽しめます。
主な栽培品種: ほぼ100%がアラビカ種で、カトゥーラ種やティピカ種などが主に栽培されています。コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)による品質管理が徹底されており、世界的に高い評価を得ています。
第5位:エチオピア(約50万トン)
第5位はエチオピアです。コーヒー発祥の地とされるアフリカのエチオピアは、コーヒーの歴史において最も重要な国の一つです。
エチオピアでは、コーヒーノキが野生で自生しており、数百年にわたってコーヒーが栽培されてきました。現在でも伝統的な栽培方法が守られている地域が多く存在します。
味の特徴: エチオピアコーヒーは、華やかな香りとフルーティーな酸味が特徴です。特にイルガチェフェやシダモなどの銘柄は、ベリー系の風味や花のような香りを持ち、多くのコーヒー愛好家を魅了しています。
主な栽培品種: アラビカ種の原種に近い在来種が多く栽培されており、遺伝的多様性に富んでいます。モカの名で知られる小粒の豆が特徴的です。
第6位:ホンジュラス(約40万トン)
第6位はホンジュラスです。中米のコーヒー生産国として近年急速に生産量を伸ばしており、国の主要な輸出品となっています。
標高が高く、適度な降雨量と火山性の土壌という恵まれた自然条件により、高品質なコーヒー豆が生産されています。
味の特徴: ホンジュラスコーヒーは、マイルドな酸味と甘い風味、バランスの良い味わいが特徴です。チョコレートやナッツのような香ばしさも感じられます。
主な栽培品種: 主にアラビカ種が栽培されており、カトゥーラ種やカトゥアイ種などが中心です。
第7位:ウガンダ(約35万トン)
第7位はウガンダです。アフリカにおける主要なコーヒー生産国で、ロブスタ種の生産が盛んです。
ウガンダのコーヒー栽培は19世紀末に始まり、現在では国の重要な輸出品となっています。
味の特徴: ウガンダのロブスタコーヒーは、力強い苦味とチョコレートのような風味が特徴です。アラビカ種も栽培されており、こちらはフルーティーな酸味を持ちます。
主な栽培品種: ロブスタ種が主流ですが、標高の高い地域ではアラビカ種も栽培されています。
第8位:ペルー(約30万トン)
第8位はペルーです。南米のコーヒー生産国として、オーガニックコーヒーの生産に力を入れています。
アンデス山脈の高地で栽培されるコーヒーは、品質の高さで知られています。
味の特徴: ペルーコーヒーは、柔らかい酸味とナッツやキャラメルのような甘い香りが特徴です。クリーンな味わいで飲みやすく、多くの人に好まれています。
主な栽培品種: アラビカ種が中心で、特にティピカ種やカトゥーラ種が栽培されています。
第9位:メキシコ(約25万トン)
第9位はメキシコです。北米唯一の主要コーヒー生産国として、長い栽培の歴史を持っています。
南部の高地を中心にコーヒー栽培が行われており、シェードグロウン(木陰栽培)など環境に配慮した栽培方法も盛んです。
味の特徴: メキシココーヒーは、マイルドな酸味と軽やかな口当たり、ナッツやチョコレートの風味が特徴です。バランスが良く、飲みやすいコーヒーとして人気があります。
主な栽培品種: アラビカ種が主に栽培されており、ティピカ種やブルボン種などが有名です。
第10位:中央アフリカ共和国(約20万トン)
第10位は中央アフリカ共和国です。近年のデータで急速に生産量を伸ばしており、注目を集めています。
主な栽培品種: ロブスタ種が中心と考えられていますが、詳細な情報は限られています。今後の発展が期待される生産国です。
アラビカ種とロブスタ種の違い
コーヒー豆には大きく分けて「アラビカ種」と「ロブスタ種」の2種類があります。それぞれの特徴を理解することで、コーヒーの味わいをより深く楽しむことができます。
アラビカ種の特徴
アラビカ種は世界のコーヒー生産量の約半分を占める主要品種です。
特徴:
- 標高1,000~2,000メートルの高地で栽培される
- 繊細で豊かな風味と華やかな酸味
- カフェイン含有量が少ない(約1~1.5%)
- 病害虫に弱く、栽培が難しい
- 価格が高め
主な生産国: ブラジル、コロンビア、エチオピア、ペルーなど
ロブスタ種の特徴
ロブスタ種は耐病性が高く、栽培しやすい品種です。
特徴:
- 低地でも栽培可能
- 力強い苦味と濃厚なコク
- カフェイン含有量が多い(約2~3%)
- 病害虫に強く、栽培が容易
- 価格が安め
主な生産国: ベトナム、インドネシア、ウガンダ、インドなど
種別生産量ランキング
アラビカ種だけのランキングでは、ブラジル、コロンビア、エチオピアなどが上位に入ります。一方、ロブスタ種だけではベトナムが圧倒的な1位で、インドネシア、ウガンダ、インドと続きます。
興味深いことに、ブラジルはロブスタ種の生産量でも世界第2位に位置しており、両方の品種で高い生産量を誇る唯一の国となっています。
世界のコーヒー生産動向
2024-2025年の見通し
2024/25年度の世界のコーヒー市場は、ブラジルとインドネシアの生産回復に牽引され、供給不足からわずかな供給過剰へと転換する可能性が示されています。
ブラジルは豊作の「表年」にあたり、総生産量は増加すると予測されています。特にアラビカ種の回復が世界全体の供給増に大きく貢献します。
また、インドネシアも前年度の不作から大きく回復し、生産量が大幅に増加する見込みです。
気候変動の影響
近年、コーヒー生産は気候変動の影響を強く受けています。
- 温暖化による栽培適地の変化: 従来の栽培地域が高温化し、より高地での栽培が必要になっています
- 異常気象の増加: 干ばつや集中豪雨などが増え、収穫量が不安定になっています
- 病害虫の拡大: 気温上昇により、これまで発生しなかった地域でも病害虫が問題化しています
価格動向
コーヒー価格は生産量、需要、気候条件、政治的要因など様々な要素に影響を受けます。近年は以下のような傾向が見られます。
- 主要生産国の干ばつや霜害による供給不足
- 世界的なコーヒー需要の増加
- 輸送コストの上昇
これらの要因により、コーヒー価格は高止まりする傾向にあります。
新興コーヒー生産国の台頭
従来の主要生産国以外にも、注目すべき新興生産国が登場しています。
中国のコーヒー生産
中国は雲南省を中心にコーヒー栽培を拡大しており、近年生産量が急増しています。国内の巨大なコーヒー市場を背景に、今後さらなる発展が期待されています。
タイのコーヒー生産
タイ北部の山岳地帯では、高品質なアラビカ種の生産が行われています。特にドイトンコーヒーなどのブランドは、国際的にも評価を得ています。
中央アフリカ・ギニアの急成長
データによると、中央アフリカ共和国とギニアが急速に生産量を伸ばしています。これらの国々は今後のコーヒー産業において重要な役割を果たす可能性があります。
コーヒー生産における課題
世界のコーヒー生産には様々な課題が存在します。
生産者の生活水準
多くのコーヒー生産国では、小規模農家が生産の中心を担っています。しかし、コーヒー価格の変動や仲介業者による搾取などにより、生産者の収入は不安定です。
フェアトレードの重要性: 公正な取引を通じて生産者の生活を支えるフェアトレードコーヒーの需要が高まっています。
環境保護との両立
コーヒー栽培は時に森林伐採や土壌劣化を引き起こします。
持続可能な栽培方法:
- シェードグロウン(木陰栽培)
- オーガニック栽培
- アグロフォレストリー(森林農業)
これらの環境に配慮した栽培方法の普及が求められています。
労働環境の改善
一部の生産国では、児童労働や劣悪な労働環境が問題となっています。倫理的な生産を支援する取り組みが重要です。
日本におけるコーヒー消費
日本は世界有数のコーヒー消費国です。
日本の輸入動向
日本が輸入するコーヒー豆の主な産地は:
- ブラジル
- ベトナム
- コロンビア
- グアテマラ
- インドネシア
近年はスペシャルティコーヒーへの関心が高まり、エチオピアやケニアなどのアフリカ産コーヒーの輸入も増加しています。
コーヒー文化の変化
日本のコーヒー文化は多様化しており:
- サードウェーブコーヒーの普及
- スペシャルティコーヒー専門店の増加
- 家庭での本格的なコーヒー抽出
- コンビニコーヒーの品質向上
消費者のコーヒーに対する知識と要求水準が高まっています。
まとめ:コーヒー生産の未来
世界のコーヒー生産は、上位数か国に大きく依存している現状があります。ブラジルとベトナムの2か国だけで世界の約半分を生産しており、これらの国の気候や政治状況が世界のコーヒー供給に大きな影響を与えます。
一方で、中央アフリカやギニアなどの新興生産国の台頭、中国やタイなどアジア諸国での生産拡大など、コーヒー生産の地図は徐々に変化しつつあります。
今後のコーヒー産業には、以下の点が重要となるでしょう:
- 気候変動への適応: 耐熱性品種の開発や栽培地域の移動
- 持続可能な生産: 環境保護と生産性の両立
- 生産者の生活向上: フェアトレードや直接取引の拡大
- 品質の追求: スペシャルティコーヒーへの需要増加
- 技術革新: 栽培技術や加工技術の進歩
私たちコーヒー愛好家にできることは、コーヒーの背景にある生産国の状況や生産者の努力を知り、持続可能で公正な取引によって生産されたコーヒーを選ぶことです。
一杯のコーヒーの向こうには、世界中の生産者たちの汗と情熱があります。その事実を心に留めながら、日々のコーヒータイムを楽しんでいただければ幸いです。
世界のコーヒー生産について理解を深めることで、いつものコーヒーがより特別な一杯になるはずです。様々な産地のコーヒーを試して、それぞれの特徴を味わってみてください。きっと新しい発見があるでしょう。



コメント