コーヒー品種完全ガイド|主要50種の味わい・特徴を調べてみた

コーヒーを選ぶとき、「エチオピア産」「グアテマラ産」といった産地で選ぶことが多いかもしれません。しかし、コーヒーの味わいを決める重要な要素がもう一つあります。それが品種です。

同じ産地でも品種が違えば、味わいは大きく変わります。ワインの「カベルネ・ソーヴィニヨン」や「シャルドネ」のように、コーヒーにも数多くの品種が存在し、それぞれに個性があるのです。

この記事では、世界中で栽培されている主要なコーヒー品種について、その特徴と味わいを詳しく解説します。あなたの好みに合った品種を見つけて、コーヒーライフをさらに豊かにしましょう。

コーヒー品種は何種類あるのか?

コーヒーの品種数については諸説ありますが、エチオピアだけで10,000種以上の識別可能な品種が存在すると言われています。スペシャルティコーヒー協会は120種類以上の異なる品種があると示唆しており、World Coffee Researchのカタログには102の栽培品種がリスト化されています。

ただし、商業的に重要な品種は限られており、本記事ではその中から特に知っておきたい主要品種を厳選してご紹介します。


原種・伝統品種:コーヒーのルーツを知る

Typica(ティピカ)- すべての始まり

ティピカは、アラビカ種の最古の品種の一つで、全コーヒー品種の遺伝的ベースとなっています。エチオピアから始まり、イエメン、ジャワを経て、中南米へと広がりました。

味わいの特徴: クリーンで甘く、バランスの取れた風味が特徴です。繊細な酸味と複雑なフルーツやフローラルの香りが感じられ、多くのコーヒー愛好家から「完璧なバランス」と評されています。

栽培の課題: 残念ながら、ティピカは収量が低く、病気に弱いという欠点があります。そのため、多くの農家が他の品種に切り替えていますが、その卓越した品質から、高品質コーヒーを追求する農園では今でも大切に栽培されています。

代表的なティピカコーヒーとしては、ジャマイカのブルーマウンテンやハワイのコナコーヒーが有名です。

Bourbon(ブルボン)- エレガントな甘み

ブルボンは、イエメンからブルボン島(現在のレユニオン島)に持ち込まれた後、中南米やアフリカ全域に広がった品種です。ティピカの突然変異と考えられています。

味わいの特徴: 甘く複雑で、バランスの取れた酸味が特徴です。チョコレートとフルーツのニュアンスがあり、時にワインのような風味も感じられます。ティピカよりもフルボディで、より甘みが際立ちます。

ブルボンには色の違いによる変種があり、Red Bourbon(赤)、Yellow Bourbon(黄)、Pink Bourbon(ピンク)、Orange Bourbon(橙)などが存在します。それぞれ微妙に味わいが異なり、特にYellow Bourbonは甘みが強いことで知られています。

ブラジル、ルワンダ、ブルンジなどで多く栽培されており、これらの国々の高品質コーヒーの多くはブルボン品種です。

Geisha / Gesha(ゲイシャ)- コーヒー界のスーパースター

ゲイシャは、エチオピアのゲシャ地域原産の品種ですが、2000年代にパナマのエスメラルダ農園で「再発見」されて以来、世界中のコーヒー愛好家を魅了しています。

味わいの特徴: ゲイシャの味わいは、他のどのコーヒーとも異なります。非常にフローラルで、ジャスミンやベルガモットのような香り、紅茶のような軽やかなボディ、柑橘系の明るく鮮明な酸味、そしてトロピカルフルーツのような甘みが特徴です。

まるでコーヒーを飲んでいるのではなく、花茶を飲んでいるような感覚になることもあります。

価格について: ゲイシャは非常に高価な品種として知られており、オークションでは1ポンド(約450g)あたり600ドル以上の価格がつくこともあります。これは収量が低く、栽培に特定の環境条件が必要なためです。

パナマ、コロンビア、コスタリカなどの高地で栽培されており、特にパナマ産のゲイシャは別格の評価を受けています。


突然変異品種:自然が生んだバリエーション

Caturra(カトゥーラ)- コンパクトで明るい

カトゥーラは、1937年にブラジルで発見されたブルボンの突然変異品種です。樹が小さく密集して栽培できるため、農家にとって効率的な品種として広まりました。

味わいの特徴: 明るい酸味とクリーンな風味が特徴で、ブルボンと比べると酸味と若干の渋みが強めです。レモンやライムのような柑橘系の明るさがあり、中煎りで飲むと特にその良さが引き立ちます。

コロンビアをはじめとする中米全域で広く栽培されており、多くの国で主力品種の一つとなっています。

SL28とSL34 – ケニアの宝石

SL28とSL34は、1930年代にケニアのScott Laboratoriesで選抜された品種で、ケニアコーヒーの代名詞とも言える存在です。

SL28の味わい: 非常に明るい酸味が特徴で、カシスやベリー、レモンのような風味があります。フルボディで複雑、時にワインのような風味も感じられます。多くのコーヒー専門家が「世界最高の酸味」と評する品種です。

SL34の違い: SL28の姉妹品種で、より湿潤な環境に適応しています。味わいはSL28に似ていますが、よりフルーティーでスパイシーなニュアンスがあります。

両品種とも干ばつや病気に弱いという欠点がありますが、その卓越した品質から、ケニアでは今でも高く評価されています。

Maragogype(マラゴジッペ)- エレファントビーン

マラゴジッペは、1870年にブラジルで発見されたティピカの突然変異品種で、通常の豆の約2倍もの大きさがあることから「エレファントビーン」と呼ばれています。

味わいの特徴: その大きさとは裏腹に、マイルドで滑らかな口当たりが特徴です。酸味は控えめで、優しい甘みがあります。

収量が低いため商業的には限定的ですが、メキシコ、グアテマラ、ニカラグアなどで今でも栽培されており、その独特の外見と味わいから一部のコーヒー愛好家に人気があります。


ハイブリッド品種:科学と農業の融合

Mundo Novo(ムンド・ノーボ)- ブラジルの主力

ムンド・ノーボは、1940年代にブラジルで発見された、ティピカとブルボンの自然交配種です。ポルトガル語で「新世界」を意味します。

味わいの特徴: フルボディでマイルドな酸味、ナッツとチョコレートの風味が特徴です。バランスが良く、深煎りにも向いています。

樹が非常に大きく成長し、高収量で病気にも強いため、ブラジルのコーヒー産業を支える重要な品種となっています。

Catuai(カトゥアイ)- 効率性と品質の両立

カトゥアイは、1950-60年代にブラジルで、ムンド・ノーボとカトゥーラを交配して作られた品種です。

味わいの特徴: バランスの取れた風味で、適度な酸味とボディがあります。カトゥーラの明るさとムンド・ノーボの安定性を併せ持っています。

コンパクトな樹形で高収量、病気にも比較的強いため、ブラジル、コスタリカ、グアテマラ、ホンジュラスなど多くの国で栽培されています。Red CatuaiとYellow Catuaiの2種類があります。

Catimor(カティモール)- 議論の多い品種

カティモールは、1959年にポルトガルで、カトゥーラとティモール・ハイブリッド(ロブスタの遺伝子を含む)を交配して作られた品種です。

開発の背景: さび病(Coffee Leaf Rust)への耐性を持たせるため、ロブスタの遺伝子が導入されました。これにより非常に高い病気耐性と収量が実現しましたが、品質面では議論があります。

味わいの特徴: 一般的に酸味が控えめで、時に苦味やアストリンジェンシー(渋み)を感じることがあります。ただし、高地で適切に栽培されたものは、ブラウンシュガー、バニラ、ストロベリー、ネクタリンなどの良質な風味を持つこともあります。

インドネシア、ベトナム、中南米、アフリカなど世界中で栽培されており、特に1700m以下の中標高地域で多く見られます。

Pacamara(パカマラ)- エルサルバドルの奇跡

パカマラは、1958年にエルサルバドルで、パカスとマラゴジッペを交配して作られた品種です。

味わいの特徴: 非常にバランスが良く、甘い柑橘系の酸味、フローラルな香り、複雑な風味が特徴です。大きな豆から生まれる豊かな味わいは、多くのコーヒー愛好家を魅了しています。

エルサルバドルをはじめとする中米で栽培されており、カップ・オブ・エクセレンスなどのコンペティションでも高い評価を受けています。

Castillo(カスティージョ)- コロンビアの革新

カスティージョは、1980年代にコロンビアで、カトゥーラとティモール・ハイブリッドを交配して開発された品種です。コロンビアでさび病が深刻化したことを受けて開発されました。

味わいの特徴: バランスの取れた風味で、適度な酸味とボディがあります。カティモールよりも品質が改善されており、コロンビアらしい特徴を保っています。

高い病気耐性と高収量を持ちながら良質な味わいを実現したことで、コロンビアでは広く普及しています。


特殊品種:個性派たち

Ethiopian Heirloom(エチオピア在来種)

エチオピア在来種は、実は単一の品種ではなく、6,000〜10,000以上もの品種の総称です。コーヒー発祥の地エチオピアには、他のどこにもない遺伝的多様性があります。

味わいの特徴: 非常に複雑で、フローラル(ジャスミン、ベルガモット)、フルーティー(桃、柑橘、ベリー)、紅茶のような風味が特徴です。明るく鮮明な酸味と、軽〜中程度のボディがあります。

エチオピアのシダモ、イルガチェフェ、ジンマなどの地域で栽培されており、それぞれの地域で微妙に異なる風味プロファイルを持っています。

Pink Bourbon(ピンクブルボン)- 謎に包まれた品種

ピンクブルボンは、その名前とは裏腹に、実はブルボンではなくエチオピア系の品種である可能性が指摘されています。

味わいの特徴: エチオピアのようなフローラルさ、ケニアのような酸味、ブルボンのようなフルボディの甘みを併せ持つ、非常に複雑な味わいです。

コロンビアのウイラ地方などで栽培されており、希少性と独特の風味から高値で取引されています。

Laurina(ラウリーナ)- 天然デカフェ

ラウリーナは、ブルボンの突然変異品種で、カフェイン含有量が通常の約半分という特徴があります。

味わいの特徴: 甘くマイルドで、酸味は控えめです。カフェインが少ないため、夜でも楽しめるコーヒーとして人気があります。

収量が非常に低く希少なため、レユニオン島や一部の中米でのみ栽培されています。


ロブスタ種:力強い相棒

Robusta(ロブスタ)は、アラビカ種とは異なる種(Coffea canephora)で、世界のコーヒー生産量の約40%を占めています。

特徴: アラビカよりも病気に強く、低地でも栽培可能で、カフェイン含有量が約2倍あります。

味わい: 強い苦味、控えめな香り、重厚なボディ、ナッツやアーシーな風味が特徴です。アラビカのような複雑な酸味や花のような香りはありませんが、深いコクがあります。

用途: エスプレッソブレンドに加えることでクレマ(泡)を増やしたり、インスタントコーヒーの原料として使用されることが多いです。近年は高品質なロブスタも注目されています。

ベトナム、インドネシア、ウガンダが主要な生産国です。


品種選びのポイント

あなたの好みに合った品種は?

酸味と香りを楽しみたい方: Geisha、Typica、SL28、Ethiopian Heirloomがおすすめです。フローラルで複雑な香りと明るい酸味が楽しめます。

バランスの良い味わいを求める方: Bourbon、Caturra、Catuai、Pacamaraが適しています。酸味、甘み、ボディのバランスが良く、万人受けしやすい味わいです。

深いコクと甘みを好む方: Mundo Novo、Pink Bourbon、Javaがおすすめ。チョコレートやナッツの風味が楽しめ、深煎りにも向いています。

ミルクと合わせたい・重めが好きな方: Robusta、深煎りのBourbon、Catimor系がよいでしょう。しっかりしたボディがミルクに負けません。

希少で特別な体験を求める方: Geisha、Pink Bourbon、Laurina、Chirosoなど。高価ですが、他では味わえない独特の風味が楽しめます。


知っておきたい重要なこと

1. 品種だけが味を決めるわけではない

同じ品種でも、産地の標高、気候、土壌、加工方法(ウォッシュド、ナチュラル、ハニーなど)、焙煎度合いによって味は大きく変わります。

標高が高いほど、より複雑で明るい酸味が生まれやすくなります。ウォッシュド(水洗式)は明るくクリーンな味わい、ナチュラル(自然乾燥式)は甘く複雑な味わいになる傾向があります。

2. 品種の純度について

多くの農園では複数の品種が混在しており、「ティピカ」として販売されていても、純粋なティピカとは限りません。長年の間に他の品種と交雑している可能性もあります。

3. 品質と収量のトレードオフ

高品質品種(Typica、Bourbon、Geisha)は、収量が低く病気に弱いという課題があります。一方、高収量品種(Catimor、Castillo)は病気に強く農家にとって栽培しやすいですが、風味面で妥協が必要な場合もあります。

近年開発されているF1ハイブリッド品種は、高品質・高収量・病気耐性を兼ね備えることを目指しており、今後のコーヒー産業を支える存在として期待されています。

4. 気候変動への対応

地球温暖化により、従来のコーヒー栽培地域が縮小しつつあります。そのため、高温耐性や病気耐性を持つ新品種の開発が急務となっています。

Stenophyllaのように、高温でも育ち、かつ優れた風味を持つ品種の再発見や、遺伝子研究による新品種の開発が進められています。


まとめ:品種を知ってコーヒーライフを豊かに

コーヒーの品種を知ることは、ワインの品種を知るのと同じように、より深い味わいの理解と楽しみをもたらしてくれます。

次にコーヒーを買うときは、ぜひパッケージに記載されている品種名をチェックしてみてください。「Geisha」「Bourbon」「Caturra」といった名前を見つけたら、この記事で学んだ特徴を思い出しながら味わってみましょう。

異なる品種を飲み比べることで、あなたの好みがより明確になり、「自分だけの一杯」を見つけることができるはずです。

コーヒーの世界は奥深く、まだまだ発見されていない品種や、新たに開発される品種もあります。この記事が、あなたのコーヒー探求の旅の良い道標となれば幸いです。

次のカップで、新しい品種に挑戦してみませんか?

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