「Made in Japan」──この言葉が示す品質への信頼は、コーヒー焙煎機の世界でも健在だ。
ドイツのプロバット、アメリカのローリング、オランダのギーセン。世界の焙煎機市場は、欧米メーカーが主導してきた。しかし、日本にも優れた焙煎機メーカーが存在する。職人気質、精密な品質管理、そして独自の技術革新──これらは、日本の製造業が誇る伝統だ。
今回は、世界に誇る日本のコーヒー焙煎機メーカー8社を徹底解説する。大手から個人製作まで、それぞれの個性と魅力を紹介しよう。
【業界のリーディングカンパニー】
1.富士珈機(フジローヤル)
創業:1955年 本社:大阪市浪速区
「日本最大のコーヒー機器メーカー、FUJI ROYALブランドの威光」
1955年、富士珈機販売株式会社として設立。FUJI ROYAL(フジローヤル)ブランドの誕生だ。1965年には主力製品である電動ミル「R-440」の自社製造に成功。この成功が、後の焙煎機製造への道を開いた。
2009年、約3年をかけて開発した小型ロースター「COFFEE DISCOVERY」を発売開始。この焙煎機は、日本のスペシャルティコーヒー界に革命をもたらした。
ディスカバリーの衝撃

生豆重量250gまで対応。半熱風方式。ガス火。幅356mm×高さ710mm×奥行631mm。重量37.9kg。
価格は約80万円前後。それでも、プロと同じクオリティの焙煎ができる小型焙煎機として、圧倒的な支持を得ている。
部品は中国製、組み立ては日本。この戦略により、品質を保ちながら価格を抑えることに成功した。
大手からスタートアップまで、サンプルロースターとして採用。有名店でもディスカバリーを使用している。YouTubeで焙煎教室を開催するロースターも多く、ディスカバリーはその主役だ。
R-101、R-103など業務用ライン
1kg、3kg、5kg、10kg、30kgまで、幅広いラインナップ。すべて受注生産。職人の手による、オーダーメイド。
フジローヤル認定中古品も販売。整備点検された中古焙煎機を、新たな活躍の場へと送り出す。
台湾総代理店「台湾豊潤有限公司」との取引は1967年から。アジア市場でも高い評価を得ている。
特徴: 日本最大手、幅広いラインナップ、ディスカバリー、サンプルロースター人気、中古市場活発 価格帯: ディスカバリー約80万円、R-101約160万円~ 適している人: 初心者からプロまで、サンプルロースター需要、国産品質重視 ホームページ:https://fuji-royal.jp/
2. カリタ(Kalita)
創業:1958年 本社:横浜市神奈川区
「三つ穴ドリッパーで有名な、コーヒー機器総合メーカー」
1958年、糸満盛京が東京日本橋で有限会社カリタを創業。木村コーヒー店の関連会社である木村産業に勤務していた経験を活かし、業務用コーヒー機器で業績を伸ばした。
喫茶店ブームに乗り、名古屋、大阪、札幌等への支社・営業所を開設。1980年代からは欧米の高級コーヒー機器の輸入業務を開始した。
カリタ式ドリッパー
三つ穴構造の「カリタ式」ドリッパーは、日本のコーヒー文化を代表する製品。波佐見焼(HASAMI)、燕市の金属加工(TSUBAME)、鳴海製陶(Narumi)と協力した製品も展開。
業務用焙煎機
カリタの焙煎機は、主に輸入品の取り扱いが中心だが、国内向けにカスタマイズされた製品も提供。業務用コーヒーマシン、グラインダーなど、トータルソリューションを提供する。
2019年創立60周年。2020年発売の電気ケトルKEDP-600は、2019年度グッドデザイン賞を受賞。
特徴: コーヒー機器総合メーカー、三つ穴ドリッパー、日本の職人技とのコラボ、輸入品カスタマイズ 価格帯: 業務用焙煎機は輸入品が中心、ホームページにはワイルド珈琲のナナハン焙煎機が掲載されている。適している人: トータルソリューションを求める事業者、カリタブランドのファン ホームページ:https://www.kalita.co.jp/products/business_roaster
【革新的な技術を持つメーカー】
3. ダイイチデンシ(NOVO シリーズ)
本社:京都市伏見区 ブランド:NOVO
「魅せる焙煎機、開店サポート付きの新しいビジネスモデル」

NOVOシリーズは、「魅せる焙煎機」というコンセプトで展開。カフェの店頭で焙煎する様子を、顧客に見せることを前提に設計されている。
開店サポートという価値
ダイイチデンシの特徴は、焙煎機の販売だけではない。NOVOシリーズを導入した顧客に対し、以下のサポートを提供する:
- 60種類以上の生豆を5kg単位の小分け対応で特別価格で卸提供
- オリジナルブランド「Drip right now!!」のドリッパー等の抽出器具の卸販売
- 生豆のラインナップ選定、無料サンプル手配
- オリジナルブレンドのご相談
- 無料の開店サポート
「そんな価値のある、長く続けられるお店を始めませんか?てっとり早く儲けてリタイアしたい、そんな投機的な方は、わざわざ珈琲店の経営をすることはありません」
この哲学が、NOVOの顧客層を形作っている。
特徴: 魅せる焙煎機、開店サポート、生豆卸提供、コミュニティ重視 価格帯: 要問い合わせ 適している人: カフェ開業予定者、店頭焙煎を考える事業者 ホームページ:https://baisenki.com/
4. アイ・シー電子工業(高速熱風式焙煎機トルネードシリーズ)
本社:群馬県
「高速熱風式焙煎機の専門メーカー」
トルネードシリーズは、高速熱風式焙煎機。従来のドラム式とは異なるアプローチで、短時間・高効率焙煎を実現。

流動床焙煎の特徴
豆が空中で浮遊しながら焙煎される。均一な加熱。短時間焙煎。独特の風味プロファイル。
大規模商業用途、インスタントコーヒー製造など、特殊な用途に強み。
特徴: 高速熱風式、流動床焙煎、大規模商業用途、特殊用途 価格帯: 産業用、要問い合わせ 適している人: 大規模商業生産、インスタントコーヒー製造 HP:https://www.icek.co.jp/food.html
5. 淀川エンジニアリング
所在地:大阪市淀川区
「石焼焙煎機の革命、国内特許取得の独自技術」

淀川エンジニアリングの最大の特徴は、「石焼焙煎機」という独自技術だ。特殊な石、特殊なセラミックを灼熱させて煎り上げる。国内焙煎機として初の国内特許を取得した、画期的な製法。
4種類の焙煎方式を自由自在に
石焼、炭焼、遠赤外線、熱風焙煎──4種類の焙煎方法が選択可能。豆の特性、求める風味に合わせて、最適な方式を選べる。
排気口がドラムの真上にあり、排気効率が非常に良い。ムラなくしっかり焙煎でき、コーヒー豆本来のさわやかな味・香り・風味を絶妙に引き出す。
焙烙焼き焙煎機は、コーヒー以外にもお茶、ゴマ、大豆の焙煎にも使用可能。多用途性が魅力。
1kg、5kgなど複数のサイズ展開。福島珈琲が代理店として販売。実際に使用しているカフェ・ロースタリーは、「石焼き珈琲」として差別化している店も多い。
特徴: 石焼焙煎、国内特許、4種類の焙煎方式、多用途、差別化要素 価格帯: 要問い合わせ 適している人: 独自性を求めるロースター、多用途焙煎、差別化戦略
6. ラッキーコーヒーマシン(BONMAC)
創業:1964年 本社:神戸市東灘区
「UCCグループの信頼、60年の歴史を持つ総合コーヒー機器メーカー」
1964年創業。業務用ロースター・コーヒーグラインダーの開発、販売からスタート。1982年、「高品質でリーズナブルな機器開発」を掲げ、自社ブランド「BONMAC/bonmac」を立ち上げた。
現在はUCCグループの一員として、従業員190名(2024年12月現在)の規模に成長。
幅広いラインナップ
焙煎機は、小型から大型まで展開。直火式8kg焙煎機などが中古市場でも人気。フルメンテナンス済み中古機も流通している。

エスプレッソマシン、グラインダー、ブルーワーなど、コーヒー関連機器を総合的に提供。トータルソリューションが強み。
UCCグループの安心感
メンテナンス事業、リフレッシュ事業、レンタル事業、海外ブランド代理店事業と、多角的な展開。カフェ開業サポートも充実。
全国にあるカフェやレストランはもちろん、一般ユーザーにも広く認知・支持されている。
特徴: UCCグループ、総合メーカー、60年の歴史、トータルソリューション、レンタル・メンテナンス 価格帯: 中古8kg焙煎機125万円~、新品は要問い合わせ 適している人: 総合的なサポートを求める事業者、UCCブランド重視 ホームページ:https://www.lucky-coffee-machine.co.jp/
7. ワイルド珈琲
所在地:東京都板橋区
「メイドインジャパンの手作り焙煎機、一生使える堅牢性」
ワイルド珈琲は、生豆販売と焙煎機製作を手掛ける専門店。アラビカ種の一級品のコーヒー豆のみを生豆で取り揃え、焙煎機の製作・販売・メンテナンスも行う。
3つの主力モデル
「アポロ焙煎機」:音が静かでコンパクト、場所を選ばない。ご家庭でも喫茶店でも使え、耐久性に優れる。微圧計は回転式で微調整がしやすい。
「ナナハン焙煎機」:焙煎量450g~1,250g。メイドインジャパン。がっしりと作ってあり、一生使える焙煎機。

「2kg焙煎機」:設置、焙煎指導は無料で行う。
手作りの温かみ
大量生産ではなく、一台一台手作り。メンテナンスも自社で対応。顧客との距離が近く、焙煎機の見学希望者には実際に焙煎して試飲も提供(無料)。
生豆販売も行っているため、焙煎機購入後の豆調達もサポート。一貫したサービス。
特徴: 手作り、メイドインジャパン、一生使える堅牢性、無料設置・指導、生豆販売も 価格帯: 要問い合わせ(アポロ、ナナハン、2kgとも) 適している人: 手作り品質重視、長期使用前提、きめ細かいサポート重視 ホームページ:https://www.wild-coffee-store.com/?mode=cate&cbid=130103&csid=0
8. 煎りたてハマ珈琲
所在地:大阪市城東区
「煎りたてハマ珈琲さんが開発した驚異の70万円台1KG焙煎機」

YouTubeで有名な煎りたてハマ珈琲さんが開発したオリジナル焙煎機。非常に優れたエンジニアリングを持つ。
驚異のコストパフォーマンス
長く使う上で、ドラムの軸の歪みなど不具合が発生しそう部分には、対策が施されている。信頼性が高い。
部品も汎用的なものが使われ、欠品などが起こりにくい工夫。ブロワーも汚れにくく、メンテナンスも非常に楽。
本格的なガス火焙煎機で、焼き上がりで1kg焙煎できる容量を持ちながら、なんと価格は驚異の約70万円。
プロ焙煎士が選ぶ「業務用小型焙煎機ランキング」で上位評価。
特徴: 優れたエンジニアリング、驚異のコスパ、1kg対応、約70万円台 適している人: コスパ重視、小規模ロースタリー、YouTubeコミュニティ ホームページ:https://hama-coffee.ocnk.net/page/397
【日本の焙煎機市場の特徴】
1. 小型・サンプルロースターの充実
フジローヤル ディスカバリー、ワイルド珈琲、煎りたてハマ珈琲など、250g~1kg の小型焙煎機が充実。サンプル焙煎、教育用、小規模カフェに最適。
2. 職人気質の品質管理
日本製焙煎機は、精密な品質管理、丁寧な仕上げが特徴。中古市場でも高値で取引される耐久性。
3. 開店サポート・コミュニティ重視
ダイイチデンシ(NOVO)のような開店サポート。煎りたてハマ珈琲のようなYouTubeコミュニティ。単に機械を売るだけでなく、顧客の成功を支援する文化。
4. 独自技術による差別化
淀川エンジニアリングの石焼焙煎、アイ・シー電子工業の高速熱風式など、独自技術で差別化。
5. 輸入品のカスタマイズ
カリタ、ラッキーコーヒーマシンなどが、海外製焙煎機を日本市場向けにカスタマイズ。電圧、ガス種、サイズなど、日本の事情に合わせた調整。
6. 価格帯の多様性
60万円台(ハマ珈琲)から数百万円(フジローヤル大型機)まで、幅広い価格帯。スタートアップから大規模ロースタリーまで対応。
【メーカー選びのポイント】
予算で選ぶ
低予算(~100万円): フジローヤル ディスカバリー、煎りたてハマ珈琲 中予算(100万円~300万円): ワイルド珈琲、ラッキーコーヒーマシン中古機、フジローヤル R-101 高予算(300万円以上): フジローヤル大型機、ラッキーコーヒーマシン新品、アイ・シー電子工業トルネード
目的で選ぶ
サンプル焙煎・教育: フジローヤル ディスカバリー 小規模カフェ(1kg/h以下): 煎りたてハマ珈琲、ワイルド珈琲 中規模ロースタリー(3kg/h~): フジローヤル R-101/R-103、ラッキーコーヒーマシン 店頭焙煎・魅せる: ダイイチデンシ NOVO 大規模商業・特殊用途: アイ・シー電子工業トルネード
特徴で選ぶ
コスパ重視: 煎りたてハマ珈琲 ブランド・信頼性重視: フジローヤル、カリタ、ラッキーコーヒーマシン(UCCグループ) サポート重視: ダイイチデンシ(NOVO)、ワイルド珈琲 技術革新重視: 淀川エンジニアリング(石焼)、アイ・シー電子工業(高速熱風) 手作り品質重視: ワイルド珈琲、ハマ珈琲 開店支援重視: ダイイチデンシ(生豆卸、開店サポート)
【世界市場での日本製焙煎機の評価】
強み
- 精密な品質管理:日本製造業の伝統
- 小型焙煎機の充実:サンプルロースター市場で強み
- 耐久性:長期使用に耐える設計
- サポート体制:丁寧なアフターサービス
- 独自技術:石焼焙煎など他にない技術
課題
- 国際展開の遅れ:Probat、Giesen、Loringに比べて海外シェアが小さい
- ブランド認知度:FUJI ROYALは知られているが、他のメーカーは限定的
- 価格競争力:中国製、トルコ製に比べて高価格
- 革新性:Loringの無煙技術、Diedrichの赤外線技術のような「革命的技術」が少ない
今後の展望
- 電気焙煎機の開発:環境規制対応
- デジタル化・AI化:RoastPATH®のようなソフトウェア統合
- アジア市場への展開:台湾、韓国、中国、東南アジア
- スペシャルティコーヒー市場:高品質・小ロット焙煎への対応強化
まとめ:日本の焙煎機、その真価
日本のコーヒー焙煎機メーカーは、世界市場ではまだ小さな存在かもしれない。しかし、その品質、サポート、そして顧客との関係性は、世界に誇れるものだ。
フジローヤル ディスカバリーは、日本のスペシャルティコーヒー界のサンプルロースター標準機となった。淀川エンジニアリングは、石焼焙煎という独自技術で差別化に成功している。煎りたてハマ珈琲は、YouTubeを通じて焙煎文化を広めている。
「Made in Japan」は、まだ健在だ。
そして、これからの日本の焙煎機メーカーは、世界に挑戦する番だ。電気焙煎機、AI制御、サステナビリティ──次の革新は、日本から生まれるかもしれない。
あなたのコーヒーライフを支える、最高の日本製焙煎機を見つけてほしい。



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