- はじめに:コーヒーという世界共通言語
- 世界のコーヒー消費量ランキング トップ20
- 1位:フィンランド(9.6kg)
- 2位:ノルウェー(7.2kg)
- 3位:オランダ(6.7kg)
- 4位:スウェーデン(6.5kg)
- 5位:スロベニア(6.1kg)
- 6位:オーストリア(5.5kg)
- 7位:セルビア(5.4kg)
- 8位:デンマーク(5.3kg)
- 9位:ドイツ(5.2kg)
- 10位:ベルギー(4.9kg)
- 11位:ブラジル(4.8kg)
- 12位:ボスニア・ヘルツェゴビナ(4.3kg)
- 13位:エストニア(4.2kg)
- 14位:スイス(3.9kg)
- 15位:クロアチア(3.8kg)
- 16位:ドミニカ共和国(3.7kg)
- 17位:コスタリカ(3.7kg)
- 18位:北マケドニア(3.6kg)
- 19位:イタリア(3.4kg)
- 20位:カナダ(3.4kg)
- なぜこれらの国ではコーヒーがこれほど愛されるのか?
- 興味深い例外と意外な事実
- おわりに:コーヒーが紡ぐ世界
はじめに:コーヒーという世界共通言語
毎朝、世界中で数十億杯のコーヒーが飲まれている。この琥珀色の液体は、単なる飲み物を超えて、文化であり、儀式であり、社交の場であり、そして多くの人々にとって、一日を始めるために欠かせないものとなっている。
しかし、コーヒー消費量は国によって大きく異なる。一人当たり年間10キログラム以上飲む国もあれば、わずか数百グラムの国もある。
本記事では、2024年の最新データに基づき、世界のコーヒー一人当たり消費量ランキング上位20ヵ国を紹介し、なぜこれらの国でコーヒーがこれほど愛されているのか、その文化的・歴史的背景を探っていく。
世界のコーヒー消費量ランキング トップ20
以下は、一人当たりの年間コーヒー消費量に基づくランキングである(単位:キログラム)。
1位:フィンランド(9.6kg)
フィンランドは、圧倒的な差で世界一のコーヒー消費国だ。一人当たり年間約9.6キログラム、これは一日平均4杯に相当する。
なぜフィンランド人はこれほどコーヒーを飲むのか?
まず、気候が大きな要因だ。北緯60度以上に位置するフィンランドでは、冬は長く暗い。11月から1月にかけて、太陽はほとんど顔を出さず、気温はマイナス20度以下になることも珍しくない。このような厳しい環境で、温かいコーヒーは体と心を温める必需品となった。
次に、文化的な側面がある。フィンランドには「カハヴィヘトキ(kahvihetki)」と呼ばれる伝統がある。これは「コーヒーの時間」を意味し、一日の中で複数回、仕事を中断してコーヒーを飲む習慣だ。実際、フィンランドの労働組合の多くは、労働契約に「コーヒー休憩の権利」を明記している。
フィンランドのコーヒーは、独特のスタイルを持つ。世界で最も浅煎りのコーヒーを好む国と言われ、明るい酸味とフルーティーな風味が特徴だ。伝統的な淹れ方は、トルココーヒーの変形で、コーヒー粉と水を何度も沸騰寸前まで加熱する方法だ。
2位:ノルウェー(7.2kg)
ノルウェーもまた、北欧の寒冷な気候がコーヒー文化を育んだ国だ。10人中9人の成人がコーヒーを飲むと言われている。
ノルウェーのコーヒー文化の特徴
ノルウェーのコーヒー消費を後押ししたのは、意外にも禁酒法だった。1917年から1927年まで、アルコールが禁止された期間、人々は社交の場で代わりにコーヒーを飲むようになった。この習慣は禁酒法廃止後も続き、コーヒーは国民的飲料として定着した。
ノルウェーは、スペシャルティコーヒーの先進国でもある。2000年と2004年に世界バリスタチャンピオンを輩出したTim Wendelboeをはじめ、多くの世界的なコーヒー専門家を生み出している。
3位:オランダ(6.7kg)
オランダは、17世紀にコーヒー貿易で重要な役割を果たした国だ。1616年、オランダ人が初めてイエメンのモカから生きたコーヒーの木をヨーロッパに持ち帰った。
オランダのコーヒー文化
オランダでは、朝食時と午前中のコーヒーブレイクが定番だ。多くの人が職場や自宅でドリップコーヒーやポッド式コーヒーを楽しむ。アムステルダムのカフェシーンは活気があり、フェアトレードやダイレクトトレードのコーヒーへの関心が高い。
オランダは利便性を重視する文化があり、ネスプレッソのようなカプセル式コーヒーメーカーの普及率が高い。
4位:スウェーデン(6.5kg)
スウェーデンは「フィーカ(fika)」文化で有名だ。フィーカとは、コーヒーを飲みながら友人や同僚と会話を楽しむ社交的な習慣で、一日に複数回行われることもある。
フィーカ:単なるコーヒーブレイク以上のもの
フィーカは単にコーヒーを飲むだけではない。それは、立ち止まり、リラックスし、人とつながる時間だ。通常、シナモンロール(カネールブッレ)やクッキーなどの甘いものと一緒に楽しまれる。
スウェーデンのコーヒーは、フィンランド同様、浅煎りが好まれる傾向にある。北欧スタイルの明るく繊細な風味が特徴だ。
5位:スロベニア(6.1kg)
バルカン半島の小国スロベニアは、意外にもコーヒー消費大国だ。オーストリア・ハンガリー帝国の影響を受けたカフェ文化と、南のイタリア式エスプレッソ文化が融合している。
6位:オーストリア(5.5kg)
オーストリアのコーヒー文化は、1683年の第二次ウィーン包囲戦に遡る。撤退したオスマン帝国軍が残したコーヒー豆から、ウィーンのカフェ文化が誕生した。
ウィーンのカフェハウス文化
ウィーンのカフェハウスは、単なる飲食店ではなく、文化的・社交的な場所として発展した。2011年、ユネスコは「ウィーンのカフェハウス文化」を無形文化遺産に登録した。
ウィーンでは、コーヒーは芸術作品のように提供される。銀のトレイに乗せられたグラス一杯の水と共に、エレガントなカップで供される。ウィンナーコーヒー(本国では「アインシュペナー」)は、世界中で知られている。
7位:セルビア(5.4kg)
セルビアを含むバルカン諸国では、トルココーヒーの伝統が今も強く残っている。濃厚で強いコーヒーが好まれ、ゆっくりと時間をかけて楽しむ。
8位:デンマーク(5.3kg)
デンマークのコーヒー文化は、「ヒュッゲ(hygge)」という概念と深く結びついている。ヒュッゲとは、居心地の良さ、温かさ、満足感を意味するデンマーク語だ。
幸福度とコーヒーの関係
デンマークは世界で最も幸福度の高い国の一つに常にランクされている。コーヒーは、友人や家族と過ごす温かい時間の中心にある。高品質なコーヒーへの敬意があり、地元で小規模焙煎されたブラックコーヒーが人気だ。
9位:ドイツ(5.2kg)
ドイツは、ヨーロッパ最大のコーヒー市場だ。総消費量では世界トップクラスだが、一人当たりでは9位となる。
ドイツのコーヒー文化
ドイツでは、フィルターコーヒー(ドリップコーヒー)が依然として主流だ。一日中コーヒーを飲む習慣があり、朝食、午前のコーヒーブレイク、午後のコーヒーとケーキ(Kaffee und Kuchen)が定番だ。
近年は、エスプレッソやカプセル式コーヒーの人気も高まっている。また、オーガニックコーヒーや認証コーヒーへの関心も強い。
10位:ベルギー(4.9kg)
ベルギーは、コーヒーとチョコレートの組み合わせで有名だ。カフェでは、コーヒーと一緒にベルギーの有名なチョコレートやワッフルが提供されることが多い。
植民地とコーヒー
ベルギーはかつてアフリカに植民地を持ち、コンゴやルワンダでコーヒーを栽培していた。この歴史的なつながりが、現在もベルギーのコーヒー文化に影響を与えている。
11位:ブラジル(4.8kg)
世界最大のコーヒー生産国であるブラジルは、消費量でも上位にランクインしている。
カフェジーニョ文化
ブラジルでは、「カフェジーニョ(cafezinho)」と呼ばれる小さなカップで提供される濃くて甘いコーヒーが伝統的だ。一日に何度も飲まれ、社交の重要な要素となっている。
ブラジル人のコーヒー消費は増加傾向にあり、スペシャルティコーヒーへの関心も高まっている。
12位:ボスニア・ヘルツェゴビナ(4.3kg)
ボスニアのコーヒー文化は、オスマン帝国時代に遡る。首都サラエボは、カフェが立ち並ぶコーヒーの街として知られている。
ボスニアンコーヒーの儀式
ボスニアンコーヒー(bosanska kafa)は、独特の淹れ方をする。粉末状のコーヒーを水と一緒に煮て、厚い泡が立つまで沸騰させる。結果は、濃厚でリッチな一杯だ。
伝統的には、角砂糖と一緒に提供される。しかし、砂糖はコーヒーに入れるのではなく、口の中で溶かしながらコーヒーを飲むのが作法だ。コーヒーを飲みながら長い会話を楽しむことが、ボスニアの社交文化の核心だ。
13位:エストニア(4.2kg)
バルト三国の一つ、エストニアでは、コーヒーが現代的なライフスタイルの一部となっている。首都タリンには、トレンディなカフェが増えており、スペシャルティコーヒー文化が発展している。
14位:スイス(3.9kg)
スイスは、世界的なコーヒーブランド「ネスカフェ」発祥の地だ。イタリアとフランスに隣接しているため、両国のコーヒー文化の影響を受けている。
カフェクリーム文化
スイスで最も一般的なコーヒーは「カフェクリーム(kaffee-creme)」だ。これは、エスプレッソマシンから抽出される長めのコーヒーで、アメリカーノに似ているが、よりクリーミーな質感を持つ。
スイスは豊かな国であり、高級なカプセル式コーヒーメーカーや職人的な焙煎への需要が高い。持続可能性や産地へのこだわりも強い。
15位:クロアチア(3.8kg)
クロアチアのカフェ文化は盛んで、特にザグレブやドゥブロヴニクなどの都市では、至る所にカフェがある。コーヒーは社交生活の中心であり、人々をつなぐ役割を果たしている。
16位:ドミニカ共和国(3.7kg)
カリブ海の国ドミニカ共和国は、コーヒー生産国でもあり、消費国でもある。地元で栽培されたコーヒーを楽しむ文化がある。
17位:コスタリカ(3.7kg)
中米の小国コスタリカも、高品質なコーヒーの生産国として知られている。国内消費も盛んで、地元の豆を誇りを持って飲む文化がある。
18位:北マケドニア(3.6kg)
バルカン半島の国々に共通するコーヒー文化が、北マケドニアにも根付いている。トルココーヒーとエスプレッソの両方が楽しまれている。
19位:イタリア(3.4kg)
意外に思われるかもしれないが、エスプレッソの本場イタリアは19位だ。
なぜイタリアの順位は低いのか?
これは測定方法に関係している。イタリア人は一回に飲むコーヒーの量が少ない。典型的なエスプレッソは30〜50mlほどで、一日に何度も飲むが、総量としては大きくならない。
重量で測定すれば、イタリアの順位は上がるだろう。イタリアのコーヒー文化は、量よりも質、そして儀式を重視する。
バールに立ち寄り、カウンターでエスプレッソを一気に飲み干し、会話を交わして去る――これがイタリア流だ。
20位:カナダ(3.4kg)
カナダは、上位20位の中で唯一のヨーロッパ以外の国だ(ブラジルとドミニカ共和国、コスタリカを除く)。
カナダのコーヒー文化
カナダでは、ティム・ホートンズという国民的コーヒーチェーンが絶大な人気を誇る。年間140億杯以上のコーヒーがカナダで消費されている。
寒冷な気候が消費を後押ししているとも言われる。また、アメリカよりも一人当たりの消費量が多いことは興味深い。
なぜこれらの国ではコーヒーがこれほど愛されるのか?
ランキングを見ると、いくつかの共通パターンが浮かび上がる。
1. 気候要因:寒冷地ほど消費量が多い
上位を占める国の多くは、北欧や北ヨーロッパの寒冷な地域だ。長く暗い冬、短い日照時間――このような環境で、温かいコーヒーは物理的にも心理的にも重要な役割を果たす。
2. 社交文化:コーヒーブレイクの制度化
フィンランドの「カハヴィヘトキ」、スウェーデンの「フィーカ」、デンマークの「ヒュッゲ」――これらの文化では、コーヒーを飲むことが社会的儀式として制度化されている。
仕事中のコーヒーブレイクは、生産性を高め、同僚との絆を深める機会として認識されている。
3. 歴史的背景:植民地貿易と禁酒法
多くの国のコーヒー文化は、植民地時代の貿易関係に根ざしている。ノルウェーとブラジルの貿易、ベルギーとアフリカの関係など。
また、ノルウェーのように、禁酒法がコーヒー消費を後押しした例もある。
4. 品質へのこだわり:スペシャルティコーヒーの台頭
北欧諸国を中心に、コーヒーの品質への関心が高まっている。単にカフェインを摂取するだけでなく、産地、品種、焙煎、抽出方法――すべてにこだわる文化が発展している。
5. 経済的豊かさ:高品質コーヒーを購入できる余裕
上位にランクされる国の多くは、経済的に豊かな国だ。高品質なコーヒー豆や高級なコーヒーメーカーを購入できる経済力が、消費量を支えている。
興味深い例外と意外な事実
アメリカは69位
スターバックス発祥の地であり、世界最大のコーヒー消費国(総量)であるアメリカは、一人当たりでは69位に過ぎない。一人当たり年間約3.1kg、一日約3杯だ。
総消費量が多いのは、人口が多いためだ。しかし、一人当たりでは、北欧諸国には遠く及ばない。
日本は約1.5kg
日本のコーヒー文化は発展しているが、一人当たりの消費量は年間約1.5kgと、世界的には低い。これは、日本では依然として緑茶が主要な飲料であることを反映している。
しかし、日本のコーヒー文化は質的には非常に高度で、多くの世界チャンピオンバリスタを輩出している。
中国はわずか0.1kg
世界人口最大の国、中国は一人当たりわずか0.1kgしか消費していない。しかし、都市部では急速にコーヒー文化が発展しており、スターバックスだけで6,000店舗以上を展開している。
今後、中国のコーヒー消費が増加すれば、世界のコーヒー市場に大きな影響を与えるだろう。
おわりに:コーヒーが紡ぐ世界
コーヒーは、世界で最も愛されている飲料の一つだ。その消費パターンは、気候、文化、歴史、経済――あらゆる要素が複雑に絡み合って形成されている。
北欧の寒い冬の朝、一杯のコーヒーで始まる一日。ウィーンのエレガントなカフェハウスでの午後のひととき。イタリアのバールでの素早いエスプレッソ。ボスニアの長い会話を伴うコーヒーの儀式。
それぞれの国、それぞれの文化で、コーヒーは独自の意味を持ち、人々の生活に深く根ざしている。
一杯のコーヒーには、生産者の労働、焙煎職人の技術、バリスタの芸術、そして何世紀にもわたる文化の歴史が込められている。
次にコーヒーを飲むとき、それがどこから来たのか、なぜ自分の国ではこのように飲まれているのか――少し考えてみるのも面白いかもしれない。
データ出典
- International Coffee Organization (ICO)
- Euromonitor International
- World Coffee Portal
- 各国統計局データ(2024年)



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