コーヒーの欠点豆完全ガイド:美味しいコーヒーを焙煎するために知っておきたいこと

コーヒーの品質を大きく左右する欠点豆。一口に欠点豆と言っても、その種類は多岐にわたり、それぞれ異なる原因で発生し、コーヒーに異なる悪影響を及ぼします。本記事では、コーヒーの欠点豆の種類について、発生原因、見た目の特徴、風味への影響まで詳しく解説していきます。

欠点豆の分類と評価システム

欠点豆は国際的な評価基準において、その深刻度によって異なるポイントが割り当てられています。SCAA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)の基準では、重度の欠点豆1粒を「フル欠点1点」、軽度の欠点豆5粒を「フル欠点1点」として計算します。

重度欠点には黒豆、発酵豆、カビ豆、異物混入などが含まれ、軽度欠点には未熟豆、虫食い豆、割れ豆、貝殻豆などが分類されます。この分類を理解することで、どの欠点豆を優先的に除去すべきか判断できるようになります。

1. 黒豆(ブラックビーン / フルブラック)

特徴と見た目

黒豆は欠点豆の中で最も深刻な種類の一つです。豆全体が真っ黒に変色したもの(フルブラック)と、部分的に黒く変色したもの(パーシャルブラック)があります。表面は光沢を失い、マットな質感になっていることが多く、触ると他の豆より柔らかく感じることもあります。

発生原因

黒豆が発生する主な原因は、収穫後の処理における問題です。精製過程で発酵が進みすぎた場合や、乾燥が不十分で微生物が繁殖した場合に発生します。また、完熟を通り越して過熟した実を収穫した際にも黒豆が生じます。地面に落ちた実を拾って精製した場合にも、土壌の微生物による汚染で黒変することがあります。

風味への影響

黒豆が1粒でもカップに混入すると、コーヒー全体に強烈な発酵臭、腐敗臭、土臭さを与えます。味わいも極めて不快で、腐ったような味、激しい酸味、えぐみが生じます。黒豆の影響は非常に強力で、他の正常な豆の風味を完全に覆い隠してしまうほどです。

焙煎時の挙動

黒豆を焙煎すると、他の豆よりも早く焦げ始め、異臭を放ちます。焙煎中にこの異臭が発生した場合は、黒豆が混入していた証拠です。焙煎後も真っ黒な状態で、表面は炭化したような質感になります。

2. 発酵豆(サワービーン)

特徴と見た目

発酵豆は、黄色がかった茶色から濃い褐色を呈します。正常な青緑色の生豆と比べると明らかに色が異なり、やや透明感のある色合いをしています。表面に光沢があまりなく、時に粘着性を帯びていることもあります。

発生原因

発酵豆は、ウォッシュド精製(水洗式)において、発酵槽での発酵時間が長すぎた場合に発生します。通常、ミューシレージ(粘液質)を除去するために12〜48時間の発酵を行いますが、これが長引きすぎると豆自体が発酵してしまいます。また、発酵槽の水が汚れていた場合や、気温が高すぎる環境での精製でも発生しやすくなります。

風味への影響

発酵豆は、コーヒーに不快な酸味と発酵臭をもたらします。具体的には、酢のような刺激的な酸味、納豆のような発酵臭、時には薬品のような味わいが生じます。バランスの良い酸味とは異なる、舌を刺すような不快な酸味が特徴です。

焙煎時の挙動

発酵豆は焙煎すると、他の豆より速く色づく傾向があります。焙煎中に酸っぱい臭いが強まることがあり、焙煎後は茶褐色から濃い茶色になりますが、正常な豆とは明らかに色合いが異なります。

3. カビ豆(モールディービーン)

特徴と見た目

カビ豆の表面には、白っぽい斑点や粉状のものが付着しています。緑がかった斑点が見られることもあり、明らかに異常な外観をしています。豆全体にカビが広がっている場合もあれば、一部分だけにカビが発生している場合もあります。

発生原因

カビ豆は、高温多湿な環境での保管が主な原因です。生豆の水分含有率が12%を超えると、カビが発生しやすくなります。倉庫での保管時に湿度管理が不十分だった場合、輸送中にコンテナ内が高温多湿になった場合、または雨季に適切な保管がされなかった場合に発生します。乾燥が不十分なまま保管された豆も、カビが生えやすくなります。

風味への影響

カビ豆は、コーヒーに強烈なカビ臭さをもたらします。湿った布のような臭い、押し入れのような臭い、土臭さなどが特徴です。味わいも不快で、苦味や渋味が強く、後味に不快な感覚が残ります。さらに、カビ豆には健康に有害なマイコトキシン(カビ毒)が含まれている可能性があり、味の問題だけでなく健康上のリスクもあります。

焙煎時の挙動

カビ豆を焙煎しても、完全にカビ臭は消えません。むしろ焙煎によってカビ臭が強調されることもあります。焙煎後の豆を嗅ぐと、明らかに不快な臭いが感じられます。

4. 未熟豆(イマチュアビーン / クエーカー)

特徴と見た目

未熟豆は、正常な豆と比べて明らかに小さく、色も青白い、または緑がかった白色をしています。表面にしわが寄っていることも多く、質感も軽く感じられます。完全に白っぽい豆もあれば、部分的に色が薄い豆もあります。

発生原因

未熟豆は、収穫時期が早すぎた場合に発生します。コーヒーチェリーが十分に成熟する前に収穫されると、中の種子(生豆)も未成熟な状態です。機械収穫では、成熟度に関係なくすべての実が収穫されるため、未熟豆の混入率が高くなります。また、樹の栄養状態が悪い場合や、日照不足の環境で育った実も未熟豆になりやすいです。

風味への影響

未熟豆は、コーヒーに青臭さ、草のような香り、生豆のような風味を与えます。味わいは渋く、えぐみがあり、全体のバランスを崩します。甘みが乏しく、ボディも薄っぺらくなります。ピーナッツの薄皮のような渋味が特徴的です。

焙煎時の挙動

未熟豆は焙煎しても十分に色づきません。他の豆が茶色く焙煎されても、未熟豆は白っぽいままか、せいぜい薄い茶色にしかなりません。これは「クエーカー」と呼ばれ、焙煎後のハンドピックで容易に識別できます。未熟豆は水分含有率が異なるため、焙煎の進行速度も正常な豆と異なります。

5. 死豆(デッドビーン)

特徴と見た目

死豆は、白っぽい灰色または乳白色をしており、表面に光沢がほとんどありません。正常な豆が持つ青緑色の輝きが全くなく、マットで生気のない外観をしています。質感も軽く、他の豆と比べて明らかに異なる外見です。

発生原因

死豆は、生育過程で何らかの理由により豆が死んでしまった状態です。栄養不足、水不足、病気、害虫の被害などが原因で、豆が正常に発育できなかった結果です。樹勢が弱い木や、栽培環境が悪い農園で発生しやすくなります。また、霜害や異常気象の影響を受けた実からも死豆が生じることがあります。

風味への影響

死豆は、コーヒーに木のような味、紙のような味、わらのような味を加えます。風味が平坦で、コクや深みがなく、全体的にフラットな味わいになります。苦味や渋味も伴い、不快な後味を残します。

焙煎時の挙動

死豆は未熟豆と同様に、焙煎しても色づきにくい特徴があります。焙煎後も白っぽい部分が残り、正常な豆とは明らかに異なる色合いになります。組織が脆弱なため、焙煎中に割れやすいこともあります。

6. 虫食い豆(インセクトダメージ)

特徴と見た目

虫食い豆には、小さな丸い穴が1つまたは複数開いています。穴の直径は1〜2mm程度で、コーヒーベリーボーラー(コーヒーキクイムシ)が開けた穴が典型的です。穴の周辺が変色していることもあり、内部に虫の糞や残骸が残っている場合もあります。

発生原因

主な原因は、コーヒーベリーボーラーという害虫です。この昆虫は、コーヒーチェリーの中に侵入し、豆を食べながら成長します。特に標高が低く気温が高い産地で被害が多く、防除が不十分な農園では虫食い豆の混入率が高くなります。収穫後の保管時にも、ゾウムシなどの害虫が豆を食害することがあります。

風味への影響

虫食い豆は、コーヒーに苦味、渋味、不快な雑味を加えます。虫が残した排泄物や唾液成分が豆に染み込んでいるため、土臭さや動物的な臭いが生じることもあります。穴が開いていることで豆の構造が弱くなり、焙煎時に細かく砕けて微粉が多くなり、抽出時に過抽出の原因にもなります。

焙煎時の挙動

虫食い豆は構造が脆弱なため、焙煎中に割れやすくなります。穴の部分から熱が侵入しやすく、部分的に焦げることもあります。焙煎後は穴がより目立つようになり、発見しやすくなります。

7. 貝殻豆(シェルビーン)

特徴と見た目

貝殻豆は、豆の表面が薄く剥がれたような形状をしています。まるで貝殻のように湾曲した薄い殻のような部分が残っており、正常な豆と比べて明らかに薄く平たい形状です。半分だけ正常で、もう半分が薄い殻状になっている豆もあります。

発生原因

貝殻豆は、乾燥過程での急激な温度変化が主な原因です。天日乾燥から機械乾燥に切り替えた際の温度差、または機械乾燥の温度設定が高すぎた場合に発生します。また、生育不良により豆の内部が十分に充実しなかった場合にも、貝殻状の豆が生じることがあります。

風味への影響

貝殻豆自体は、風味への直接的な悪影響は比較的少ないものの、焙煎ムラの原因となります。薄い部分は焙煎が進みすぎて焦げやすく、焦げた苦味や炭のような味を加えます。正常な豆との焙煎度合いの差が大きくなり、全体の風味バランスを崩します。

焙煎時の挙動

貝殻豆の薄い部分は、熱伝導が速く、他の部分よりも早く焙煎が進みます。結果として、一部が焦げているのに他の部分はまだ十分に焙煎されていない、というムラが生じます。焙煎の難易度を上げる欠点豆の一つです。

8. 割れ豆・欠け豆(ブロークンビーン / チップドビーン)

特徴と見た目

割れ豆は、豆が完全に二つに割れてしまった状態です。欠け豆は、豆の一部が欠けて失われた状態で、欠損の程度は様々です。小さな欠けから、半分近く失われているものまであります。

発生原因

精製過程での物理的な衝撃が主な原因です。脱穀(パーチメント除去)時の機械的な圧力、選別機械での衝撃、輸送中の振動などにより豆が割れたり欠けたりします。また、乾燥が不均一で豆の水分含有率にムラがあると、機械にかけた際に割れやすくなります。過度に乾燥した豆も脆くなり、割れやすくなります。

風味への影響

割れ豆や欠け豆は、表面積が増加するため焙煎時に焦げやすく、焦げた苦味や炭化した味を加えます。また、抽出時にも細かい破片が混入しやすく、過抽出による渋味やえぐみの原因となります。微粉が多くなることで、コーヒーの透明感が失われ、濁った味わいになります。

焙煎時の挙動

割れ豆は表面積が大きいため、熱の吸収が速く、正常な豆よりも早く焙煎が進みます。結果として、同じ焙煎時間でも割れ豆だけが焦げてしまうことがあります。特に半分だけ欠けている豆は、欠けた部分と残っている部分で焙煎の進み方が異なり、極端なムラが生じます。

9. パーチメント残留豆(パーチメント付き豆)

特徴と見た目

生豆の表面に、薄茶色または灰色の薄い殻(パーチメント)が一部残っている状態です。パーチメントは紙のような薄い膜で、豆の一部または全体を覆っています。完全にパーチメントが残っている豆もあれば、部分的に残っている豆もあります。

発生原因

パーチメントとは、コーヒー生豆を包んでいる内果皮のことで、精製の最終段階で脱穀機により除去されます。脱穀機の調整が不適切だった場合、またはメンテナンス不足により完全に除去されないことがあります。豆の形状が不規則な場合や、水分含有率が適切でない場合にも、パーチメントが残りやすくなります。

風味への影響

パーチメントが残っていると、焙煎時にパーチメント部分が焦げて、焦げた紙のような味、渋味、不快な苦味がコーヒーに加わります。パーチメント自体には栄養価や風味がなく、焙煎すると炭化してしまうため、悪影響しかありません。

焙煎時の挙動

パーチメントが残っている部分は、豆本体とは異なる速度で焙煎が進みます。パーチメントは薄くて可燃性が高いため、焙煎中に焦げやすく、時には炎を上げて燃えることもあります。焙煎後もパーチメントが炭化して黒く残り、外観を損ないます。

10. 異物(フォーリンマター)

特徴と内容

厳密には豆ではありませんが、生豆に混入する異物も「欠点」として評価されます。小石、木片、金属片、土の塊、他の植物の種子などが含まれます。

混入原因

収穫時に地面から拾った実に土や小石が付着していた場合、精製時の選別が不十分だった場合、保管・輸送中に異物が混入した場合などに発生します。

影響

異物は焙煎機や粉砕機を破損させる危険性があります。また、風味にも悪影響を及ぼし、場合によっては健康被害の原因となる可能性もあります。

まとめ

コーヒーの欠点豆は、それぞれ異なる原因で発生し、異なる特徴を持ち、コーヒーに異なる悪影響を及ぼします。黒豆やカビ豆のように健康リスクもある重度の欠点から、未熟豆や割れ豆のように風味に影響を与える軽度の欠点まで、多様な種類が存在します。

これらの欠点豆を理解し、適切に選別することで、コーヒーの品質を大きく向上させることができます。生豆の状態で特徴を把握し、焙煎前に丁寧に除去することが、美味しいコーヒーを作る第一歩なのです。

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