ハリオのドリッパー全バリエーションと開発の歴史

コーヒー愛好家なら誰もが知る「HARIO(ハリオ)」。世界中のバリスタに愛用されるV60ドリッパーを生み出したこのメーカーは、実は1921年創業の耐熱ガラスメーカーです。100年を超える歴史の中で培われた技術とコーヒーへの情熱が、現在の多彩なドリッパーラインナップを生み出しました。

ハリオのドリッパー開発の歴史

起源:理化学ガラスからコーヒー器具へ

ハリオの歴史は、1921年に東京・神田須田町で柴田弘製作所として創業したことに始まります。社名の由来は「玻璃王(ガラスの王様)」で、当初は理化学用硝子器具の製造・販売を行っていました。その高い技術力は国内外で評価され、やがて家庭用品分野への進出のきっかけとなります。

最初に手がけた家庭用コーヒー器具が「コーヒーサイフォン」でした。興味深いことに、社内では化学実験で使われる三角ロートとろ紙を四つ折りにしてコーヒーを淹れていたといいます。この何気ない日常の風景が、後の円錐形ドリッパー開発の原点となりました。

1980年「珈琲狂時代」の誕生

V60の原型となったのが、1980年に発売された「珈琲狂時代」です。当時、コーヒーメーカーが主流で、ドリッパーといえば半世紀以上も扇形(舟形)が使われていた時代に、ハリオは円錐形という革新的な形状に挑戦しました。

この商品は、カフェのマスターが丁寧に淹れるネルドリップを、もっと手軽に家庭で再現できないかという想いから生まれました。ガラス試験室にあった漏斗と濾紙で1杯分の抽出を試み、紙を浮かせるためにスチールの線材を使用した、まさにV60円錐形ドリッパーの原型でした。残念ながら当時は広く普及しませんでしたが、2021年の創業100周年を記念して復刻され、その歴史的価値が再認識されています。

2005年 V60透過ドリッパーの革命

「珈琲狂時代」から25年の時を経て、2005年についに現在の「V60透過ドリッパー」が誕生しました。この間、ハリオはステンレスメッシュフィルターやプレス式コーヒーメーカーなど、さまざまな抽出方法を模索していましたが、やはりペーパーフィルターでネルドリップの味を手軽に再現したいという想いは消えませんでした。

V60という名前の由来は、円錐形ドリッパーのVの字と、その角度が60度であることから付けられました。開発時には、リブの長さや数、角度など、何度も繰り返し実験が行われたといいます。

世界的ブレイク:サードウェーブとともに

V60が世界的に認知されるきっかけとなったのが、2010年の世界最高峰のバリスタ競技大会「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)」での優勝者による使用でした。コーヒーの「第三の波(サードウェーブ)」が広がる中、V60を使用したバリスタが優勝したことで、その後の国際的なバリスタ大会でも多く使われるようになりました。

現在では世界75カ国以上で使用され、プロからアマチュアまで幅広いユーザーに愛されています。2025年には誕生20周年を迎え、ますますその進化は続いています。

V60の3つの特徴

V60ドリッパーが世界中で愛される理由は、その独自の構造にあります。

1. 円錐形の深い層 従来の扇形ドリッパーに比べ、深いコーヒー粉の層ができ、注がれたお湯が中心に向かって流れることで、コーヒー粉に長く触れ、成分をより多く抽出できます。

2. 大きな一つ穴 注がれたお湯がドリッパーの制限を受けることなく、ネルドリップのように抽出できます。お湯を注ぐ速度でコーヒーの味を変えることができるため、淹れる人の好みで楽しめます。

3. スパイラルリブ ドリッパー内部のリブ(凹凸)を高く上部まで伸ばし、ペーパーとドリッパーの間に空間を作ることで、「蒸らし」によるコーヒー粉の膨張を妨げず、空気がしっかり抜ける構造になっています。

ハリオのドリッパー全バリエーション

V60シリーズ(円錐形)

1. V60透過ドリッパー(プラスチック製) 最もベーシックなモデル。AS樹脂またはポリプロピレン製で、軽量かつ扱いやすい。サイズは01(1-2杯用)、02(1-4杯用)、03(1-6杯用)の3種類。カラーは透明、レッド、ブラック、ホワイトなど多彩。

2. V60透過ドリッパー セラミック 有田焼の磁器を使用した高級モデル。400年続く伝統的な焼き物の技術が活かされており、保温性に優れています。サイズは01、02、03で、カラーはホワイト、ブラック、レッド、マットブラックなど。

3. V60耐熱ガラス透過ドリッパー ハリオの原点である耐熱ガラス製。抽出過程が見える透明感が魅力。サイズは01、02、03で、カラーはブラック、ホワイト。

4. V60メタルドリッパー ステンレス製で耐久性抜群。アウトドアでの使用にも最適。サイズは01、02で、カラーはシルバー、マットブラックなど。

5. V60チタンドリッパー 軽量で錆びにくいチタン製。02サイズのみ。

6. V60カパードリッパー 銅製で熱伝導率が高く、美しい経年変化が楽しめる。02サイズのみ。

7. V60オリーブウッドドリッパー 天然のオリーブ材を使用した唯一無二のドリッパー。温かみのある木の質感が特徴。サイズは01、02。

8. V60ドリッパー MUGEN 2024年に登場した革新的なモデル。星型の溝により、1回の注湯で抽出できる設計。誰でも簡単に美味しく淹れられることを目的に開発されました。サイズは01、02。

9. V60ドリッパー SUIREN(虹) 2024年に発表された特殊デザインモデル。ハンドドリップをより多くの人が楽しめるよう設計されています。

10. V60ドリッパー NEO 2025年に登場した最新モデル。72本の極細スパイラルリブを施し、底部で9本に集約する独自構造を実現。高速抽出が可能で、クリーンかつ飲みごたえのある味わいが特徴。サイズは01、02、03。

11. V60 フラットドリッパー 平底の独自形状を持つモデル。

12. 粕谷モデル(V60 バリスタモデル) 2016年ワールド・ブリューワーズ・カップ優勝者の粕谷哲氏監修モデル。

13. HARIO×たち吉 V60透過ドリッパー 老舗料亭「たち吉」とのコラボレーションモデル。有田焼セラミック製。

浸漬式ドリッパー

14. 浸漬式ドリッパー スイッチ(ガラス製) 耐熱ガラス製で、スイッチ操作により透過式と浸漬式を切り替え可能な革新的なドリッパー。サイズは200mL、360mL。

15. 浸漬式セラミックドリッパー スイッチ 有田焼の磁器を使用した高級版スイッチ。サイズは200mL、360mL。

ペーパーレスドリッパー

16. カフェオールドリッパー ステンレスメッシュ採用で、ペーパーフィルター不要。コーヒーオイルも抽出でき、豊かな風味が楽しめます。サイズは01(1杯用)、02(1-4杯用)。

17. カフェオールドリッパー・BATON コーヒーカスなどの天然系無機物を配合した環境配慮型モデル。サイズは01、02。

18. カフェオール ドリッパーポット ドリッパーとポットが一体化した便利なモデル。2杯用。

19. ダブルメッシュメタルドリッパー オールステンレス製で、二重メッシュフィルターを採用。微粉を抑えながらコーヒーオイルは通す設計。サイズは01(1-2杯用)、02(1-4杯用)。

初心者向けドリッパー

20. ペガサスドリッパー 台形で小さな二つ穴とスパイラルリブを持つ初心者向けモデル。安定した抽出が可能。サイズは01(1-2杯用)、02(2-4杯用)、03(4-7杯用)。

21. V60 Drip-Assist 2種類の抽出穴で抽出をサポートするツール。初心者でも安定した抽出が可能。

復刻モデル

22. 珈琲狂時代(復刻版) 2021年の創業100周年を記念して復刻された、V60の原型となった1980年代のモデル。ステンレス製ドリッパーと耐熱ガラス製サーバーのセット。1杯用。

まとめ

ハリオのドリッパーは、少なくとも22種類以上のモデルがあり、サイズやカラーのバリエーションを含めると100種類以上のSKUが存在します。1921年の創業から100年以上、理化学ガラスの技術を活かしながら、コーヒー抽出の本質を追求し続けてきたハリオ。1980年の「珈琲狂時代」から2005年の「V60透過ドリッパー」誕生、そして2010年の世界的ブレイクまで、その歩みは決して平坦ではありませんでした。

しかし、「ネルドリップの味を手軽に再現したい」という一貫した想いが、今や世界中のコーヒーラバーに愛される製品群を生み出しました。素材もプラスチック、セラミック、ガラス、金属、木材と多彩で、それぞれに異なる魅力があります。

2025年にV60が20周年を迎える今、ハリオは「V60 ドリッパー NEO」や「MUGEN」、「SUIREN」といった新しいモデルを次々と投入し、さらなる進化を続けています。コーヒーを淹れる楽しさと美味しさを追求するハリオのドリッパーは、これからも世界中のコーヒータイムを彩り続けることでしょう。

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