プロローグ:ハワイの路地裏で出会った衝撃
ハワイ、オアフ島。2010年代初頭。
「丸亀製麺」を世界展開する夢を抱いていたトリドールホールディングスの粟田貴也社長は、ハワイへの出店準備のため、現地を視察していた。
打ち合わせの合間、ふらりと立ち寄った小さなローカルカフェ。そこで粟田が目にしたのは、時間が止まったような空間だった。
ヤシの木の影で笑い合う地元の人々。カラフルなハワイアンシャツを着た店員の温かい笑顔。窓から差し込む柔らかな日差し。そして、店内に漂うコーヒーの豊かな香り。
「この空間を、日本でも再現したい」
粟田の心に、強烈な衝撃が走った。それは、ビジネスとしての計算ではなく、純粋な感動だった。
丸亀製麺は「効率」を追求したビジネスモデルで成功を収めた。しかし、このカフェには、効率とは真逆の何かがあった。
ゆったりと流れる時間。 フレンドリーでありながら押し付けがましくない接客。 利益よりも、お客様の心地よさを優先する姿勢。
「次は、この”非効率”で勝負したい」
帰国後、粟田は決意した。日本に、本物のハワイアンカフェを作る。それは、丸亀製麺とは全く異なる、新しい挑戦の始まりだった。
第一章:埼玉・ふじみ野から始まった夢
2013年12月。埼玉県ふじみ野市。
郊外の幹線道路沿いに、異彩を放つ建物が現れた。ヤシの木が植えられた入り口。カラフルな外観。店名は「Kona’s Coffee(コナズ珈琲)」。
コナ(Kona)とは、ハワイ島西海岸の地名。世界三大コーヒーの一つ「コナコーヒー」の産地として知られる場所だ。
店内に足を踏み入れると、そこは完全にハワイだった。
サーフボードが壁に飾られ、ハワイアン雑貨が随所に配置されている。椅子やテーブルは、一つとして同じものがない。世界に一脚だけのオリジナルソファもある。小上がり席まで用意され、まるでハワイのローカルの家のようだ。
そして、店内には本物のヤシの木が植えられていた。
「ハワイの演出を大切にしていく中で、本物の植栽にこだわりました」
初代店長はそう語った。
しかし、最初は苦労の連続だった。
郊外のファミリーレストランとしては、客単価が高すぎる。パンケーキ一つで1,000円以上。コーヒーも一杯500円以上。
「こんな高いカフェ、誰が来るんだ?」
周囲の反応は冷ややかだった。
第二章:「ストロベリー&バナナホイップパンケーキ」の誕生
しかし、粟田たちには確信があった。
日本人は、本物を求めている。表面的なハワイではなく、心からリラックスできる空間を。そして、妥協のない味を。
メニュー開発は、徹底的にこだわった。
看板メニューとなる「ストロベリー&バナナホイップパンケーキ」。開発には何ヶ月もの時間をかけた。
パンケーキ生地は、店内で一から手作り。注文が入ってから一枚ずつ丁寧に焼き上げる。ふわふわでありながら、しっかりとした食感。ほのかな塩味が、スイートな味わいを引き立てる。
そして、高さ約18cmもあるホイップクリーム。
「この高さ、大丈夫ですか?」
スタッフからは心配の声が上がった。しかし、粟田は譲らなかった。
「ハワイは、大胆で楽しい場所だ。このインパクトが必要なんだ」
フレッシュないちごとバナナをふんだんに使用。ホイップクリームは甘さ控えめで、ぺろっと食べられる軽やかさ。そして、テーブルには秘密の武器が用意されていた。
コーヒー豆を挽くミルだ。
「エスプレッソの豆を削って、パンケーキにかけてみてください」
店員がそう勧める。削りたてのコーヒー豆の香りが、ホイップクリームと混ざり、カフェオレのような味わいに変化する。
この一皿が、コナズ珈琲の運命を変えた。
第三章:SNSが広げた「ハワイ体験」
2014年、Instagram が日本で急速に普及し始めた頃。
コナズ珈琲のパンケーキは、「インスタ映え」の代名詞となった。
高さ18cmのホイップクリーム。カラフルなフルーツ。ハワイアンな店内。すべてが、SNSで拡散されるのに最適だった。
しかし、粟田たちが目指したのは、単なる「映える」カフェではなかった。
2021年9月、コナズ珈琲はInstagram運用を本格的に強化した。
その結果は驚異的だった。フォロワーは月換算で2倍以上に増加(912人から2,032人へ)。リーチやエンゲージメントが伸び、UGC(ユーザー生成コンテンツ)も月に300件増加した。
新たなファンを獲得できたのは、Instagramの「発見タブ」に、コナズ珈琲のコンテンツが露出されるようになったことが大きかった。
郊外型の店舗だったが、都心からも足を運ぶ人が現れた。
「わざわざ電車を乗り継いで来ました」 「ここに来ると、本当にハワイに行った気分になれる」
そんな声が、続々と寄せられるようになった。
第四章:ALOHAの精神
コナズ珈琲のコンセプトは、単なる「ハワイ風カフェ」ではない。
その核心にあるのは、「ALOHA」の精神だ。
A – Akahai(思いやり) L – Lokahi(協調性) O – Olu’olu(心地よさ) H – Ha’a Ha’a(謙虚さ) A – Ahonui(忍耐)
これら5つの言葉の頭文字から成る「ALOHA」。それは、ハワイの人々が大切にしてきた生き方そのものだ。
「私たちがその『ALOHA』の精神を持ち続け、自然と笑顔になってしまうくらい居心地の良い空間をお届けしたい」
代表取締役社長の阿部和剛は、そう語る。
実際、コナズ珈琲のスタッフは、驚くほどフレンドリーだ。
「パンケーキ、4枚で足りますか?1枚100円で追加できますよ」 「ホイップクリームも追加できますが、もともと15cmもあるので、二人なら十分かもしれませんよ」
親切で、でも押し付けがましくない。お客様のことを本当に考えた接客。
ある常連客は、こう語った。
「月に一度、必ずここに来る。パンケーキが食べたいというより、この空間と、スタッフの笑顔に会いたくて来るんです」
第五章:コロナ禍での逆襲
2020年、新型コロナウイルスのパンデミックが世界を襲った。
飲食業界は、壊滅的な打撃を受けた。多くの店が閉店に追い込まれる中、コナズ珈琲は逆に成長を続けた。
2019年から2022年の間、店舗数を33店舗から41店舗に増加。売上高は1.5倍以上、営業利益は3倍近くまで増加した。
なぜ、コロナ禍でも成長できたのか?
その秘密は、「郊外戦略」にあった。
コナズ珈琲の店舗は、ほぼすべてが郊外にある。都心の密集した場所ではなく、広々とした駐車場付きの店舗。
コロナ禍で、人々は密を避けるようになった。都心のカフェは敬遠された。しかし、郊外の広々とした空間は、むしろ求められた。
さらに、コナズ珈琲には「滞在時間の制限がない」という大きな特徴があった。
「まるでハワイで過ごすような、ゆったりとした時間を楽しんでいただきたい」
その思いから、コナズ珈琲は時間制限を設けていない。お客様は、何時間でもゆっくり過ごせる。
コロナ禍で在宅勤務が増えた人々にとって、コナズ珈琲は「第三の場所」となった。仕事でも家でもない、リラックスできる場所。
週末には、3世代で訪れる家族も増えた。
「おじいちゃんも、お父さんも、子どもも、みんなが楽しめる場所って、実は少ないんです。コナズ珈琲は、その全てを満たしてくれる」
第六章:「非効率」という戦略
2023年4月1日。コナズ珈琲事業は、株式会社KONA’Sとして分社化された。
トリドールホールディングスの粟田社長から、阿部和剛が代表取締役社長に就任。新たな体制でのスタートだった。
日本経済新聞は、この動きを「第2の丸亀製麺を目指すコナズ珈琲」と報じた。しかし、その戦略は丸亀製麺とは真逆だった。
丸亀製麺は「効率」の極致だ。セルフサービス、回転率重視、都心立地。しかしコナズ珈琲は、あえて「非効率」を選んだ。
パンケーキは、注文が入ってから一枚ずつ焼く。 コーヒーは、各店舗で自家焙煎し、注文ごとにハンドドリップ。 店舗ごとに、完全に異なるデザイン。 滞在時間の制限なし。
効率だけを考えれば、すべて間違っている。しかし、その「非効率」こそが、コナズ珈琲の価値だった。
「手間ひまを惜しまない。それが、最高の体験を生み出すんです」
阿部社長の言葉には、確固たる信念があった。
第七章:希少なコナコーヒーへのこだわり
コナズ珈琲の名前の由来である「コナコーヒー」。
ハワイ島西海岸のコナ地区で栽培される、世界三大コーヒーの一つだ。しかし、その生産量は世界のコーヒー生産量の1%未満という、極めて希少なコーヒーでもある。
コナズ珈琲では、この希少なコナコーヒーを、最高の状態で提供するため、徹底的にこだわっている。
各店舗で自家焙煎 店舗ごとに焙煎機を設置し、新鮮な豆を常に用意。
注文ごとにハンドドリップ 挽きたての豆を、一杯ずつ丁寧にドリップ。
コーヒー本来の香りと深い味わい 手間をかけることで、コナコーヒーの真の美味しさを引き出す。
「コーヒーは、単なる飲み物じゃない。それは、ハワイの土地、気候、生産者の情熱が凝縮された一杯なんです」
バリスタの言葉に、コナズ珈琲のコーヒーへの愛情が込められていた。
第八章:全国へ、そして50店舗へ
2013年12月、埼玉・ふじみ野の1号店から始まったコナズ珈琲。
その成長は、着実だった。
2019年 – 33店舗 2022年 – 41店舗 2023年3月 – 41店舗 2024年3月 – 42店舗 2025年7月 – 50店舗達成(鎌ヶ谷店オープン)
2025年11月には、愛知県3店舗目となる岡崎美合店もオープン。宮城県利府店では、地域のシンボルだった赤い水車を残すことで、地域へのリスペクトを示した。
各店舗は、その土地の雰囲気に合わせて、独自のデザインになっている。全国すべての店舗が違う造りで、「コナズ巡り」を楽しむファンまで現れた。
「今日はこの席だったけれど、次はあの席で食べてみたい」
そんな次回来店につながるワクワク感。それが、コナズ珈琲の強みだった。
第九章:メニューの魔法
コナズ珈琲のメニューは、圧倒的に豊富だ。
パンケーキだけで10種類以上
- ストロベリー&バナナホイップパンケーキ(販売数No.1)
- コーヒー農園パンケーキ
- プリンアラモアナパンケーキ
- マカダミアナッツソースパンケーキ
- クラシックブリュレパンケーキ(期間限定)
- ピンクストロベリー&バナナホイップパンケーキ(春限定)
ハワイアンフード
- アボカドハンバーグロコモコ
- ガーリックシュリンプ
- エッグベネディクト
- ポキボウル
- ココナッツカレー
ハンバーガー
- コナズバーガー
- アボカドバーガー
- 照り焼きバーガー
- ダブルバーガー
そして、季節ごとのフェアメニュー。
2026年1月には、「ココナッツカレーフォー」が登場。濃厚なココナッツミルクと複数のスパイスが香り高い、冬限定メニューだ。
「迷うのも楽しみのひとつ」
メニューを見ているだけで、ワクワクする。何度訪れても、新しい発見がある。それが、コナズ珈琲の魅力だった。
第十章:ハワイアングッズという体験
コナズ珈琲は、カフェでありながら、ショップでもある。
店内には、ハワイアングッズコーナーが設置されている。
- コナズ珈琲オリジナルマグカップ
- タンブラー
- コーヒー豆
- パンケーキミックス(自宅で楽しめる!)
- Locopelli(ロコペリ)グッズ
- ハワイアン雑貨
特に人気なのが、「パンケーキミックス」だ。
自宅で、あのもっちりとしたパンケーキが簡単に作れる。手土産やプレゼントとしても人気で、「コナズ珈琲の味を家でも楽しみたい」というファンに支持されている。
モバイルオーダー&テイクアウトも充実。事前予約すれば、待たずに受け取れる。カラフルなハイビスカスが描かれたテイクアウト用の箱は、それ自体が「ハワイ体験」だ。
第十一章:数字が語る成功
コナズ珈琲の成功は、数字にも表れている。
トリドールホールディングスの2024年度第2四半期決算を見ると、コナズ珈琲事業は前期比+6.8億円の増収。事業利益では+3.8億円の増益を記録した。
驚くべきことに、この期間の出店は0店舗。つまり、すべて既存店の売上と利益だけで達成したのだ。
単純計算すると:
- 月の増収:約5,700万円
- 1店舗1ヶ月あたり:約140万円の増収
- 平均客単価2,000円、粗利30%と仮定すると、月2,300人以上の集客増
これは、並大抵のことではない。
客単価は比較的高いが、地域の住民がこぞって押し寄せる。平日朝の開店前から行列ができ、昼時には満席。週末は1〜2時間待ちも珍しくない。
それでも、人々は待つ。
なぜなら、コナズ珈琲でしか味わえない体験があるからだ。
エピローグ:2026年、新ブランド誕生
2026年2月3日。コナズ珈琲から、大きな発表があった。
新ブランド「KNOWS COFFEE」の誕生だ。
3月18日、イオンモール津田沼South に第1号店をオープン。コンセプトは”いちばん近いサンセット”。ハワイのサンセットタイムのようなひとときを提供する。
コナズ珈琲が「ローカルハワイの朝から昼」を表現するなら、KNOWS COFFEEは「ハワイの夕暮れ」を表現する。
夕陽に染まるビーチ。 静かに波が打ち寄せる音。 一日の終わりに、ゆっくりとコーヒーを味わう時間。
コナズ珈琲の挑戦は、まだ終わらない。
埼玉・ふじみ野の小さなカフェから始まった物語。
「この空間を、日本でも再現したい」
粟田社長の純粋な想いは、12年の時を経て、全国50店舗へと広がった。
コロナ禍でも成長を続け、今や「第2の丸亀製麺」と呼ばれるまでになった。しかし、その本質は丸亀製麺とは全く異なる。
効率ではなく、体験。 回転率ではなく、滞在時間。 画一化ではなく、個性。
「ALOHA」の精神で、一人ひとりのお客様に寄り添う。
ある週末の午後。コナズ珈琲の店内で、3世代の家族が笑顔でパンケーキを囲んでいた。
おじいちゃんは、ゆっくりとコナコーヒーを味わう。 お父さんは、ロコモコに舌鼓を打つ。 子どもたちは、高さ18cmのホイップクリームに大興奮。
そして、スタッフは満面の笑顔で、テーブルを回る。
「お味はいかがですか?」 「コーヒー豆、もっと削りましょうか?」
ハワイは、4,000km以上離れている。
でも、ここには「いちばん近いハワイ」がある。
それは、建物や装飾だけではない。 「ALOHA」の精神が生み出す、心からの居心地の良さ。 手間ひまを惜しまず作られた、最高の一皿。 そして、スタッフの温かい笑顔。
コナズ珈琲は、これからも進化し続ける。
新しいメニュー、新しい店舗、新しいブランド。
しかし、変わらないものがある。
「自然と笑顔になってしまうくらい居心地の良い空間をお届けする」
その想いだけは、決して変わらない。
コナズ珈琲 店舗・メニュー情報
基本情報
- 創業: 2013年12月
- 1号店: 埼玉県ふじみ野市「コナズ珈琲 ふじみ野店」
- 店舗数: 全国50店舗以上(2025年7月時点)
- 運営会社: 株式会社KONA’S(トリドールホールディングスグループ)
- 代表取締役社長: 阿部和剛
- コンセプト: “いちばん近いハワイ”
人気メニュー
スイートパンケーキ
- ストロベリー&バナナホイップパンケーキ – 1,580円(税込1,738円) ※2013年から2024年までの全メニュー販売数No.1 甘酸っぱいいちごとバナナ、高さ約18cmのホイップクリーム
- コーヒー農園パンケーキ – 1,480円(税込1,628円)
- プリンアラモアナパンケーキ – 1,580円(税込1,738円)
- マカダミアナッツソースパンケーキ – 1,480円(税込1,628円)
ミールパンケーキ
- パンケーキ追加:1枚100円(税込110円)で何枚でも追加可能!
ハワイアンディッシュ
- アボカドハンバーグロコモコ – 1,580円(税込1,738円)
- ガーリックシュリンプ&フレンチフライ – 1,580円(税込1,738円)
- ポキボウル – 1,480円(税込1,628円)
ハワイアンバーガー
- コナズバーガー – 1,380円(税込1,518円)
- アボカドバーガー – 1,480円(税込1,628円)
コーヒー
- コナコーヒー – 各店舗で自家焙煎、注文ごとにハンドドリップ
- トロピカルドリンク – コナズブルーハワイ、シャーリーテンプルなど
特徴
- 滞在時間制限なし – ハワイで過ごすような、ゆったりとした時間を
- 店内焙煎コーヒー – 各店舗で焙煎した新鮮なコナコーヒー
- 手作りパンケーキ – 注文後に一枚ずつ丁寧に焼き上げ
- 全店舗異なるデザイン – 店舗ごとに独自の内装・外装
- テイクアウトOK – ほとんどのメニューがテイクアウト可能
- ハワイアングッズ販売 – オリジナルグッズ、コーヒー豆、パンケーキミックスなど
主要店舗
- ふじみ野店(埼玉) – 記念すべき1号店
- 利府水車店(宮城) – 地域のシンボル「赤い水車」が目印
- 姫路店(兵庫) – 80席以上のゆったり空間
- 岡崎美合店(愛知) – 2025年11月オープン
- 鎌ヶ谷店(千葉) – 2025年7月、記念すべき50店舗目
新ブランド
KNOWS COFFEE
- オープン予定:2026年3月18日
- 場所:イオンモール津田沼South
- コンセプト:”いちばん近いサンセット”
公式サイト:https://konas-coffee.com/
2013年、ハワイで感じた衝撃から始まった物語。 一杯のコーヒーと、一枚のパンケーキが、人々を笑顔にする。 それが、コナズ珈琲の”ALOHA”。
あなたも、「いちばん近いハワイ」を体験してみませんか? ゆったりとした時間の中で、最高の一杯と一皿を。 コナズ珈琲で、日常から離れた特別なひとときを。


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